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第38回日本臨床栄養代謝学会学術集会 JSPEN2023 レポート(2) | 2023年5月
チーム医療・病棟常駐時代の
管理栄養士のあるべき姿を考える
2023年5月9~10日に神戸コンベンションセンター(兵庫県神戸市)で第38回日本臨床栄養代謝学会学術集会が行われた。当協会からも宮澤靖代表理事を筆頭に、多数の理事・栄養経営士が発表者として登壇した。今号ではその模様の一部を紹介するとともに、栄養経営士にとって関心が高いであろう、大会2日目に行われた管理栄養士の病棟常駐に関する発表のレポートを掲載する。
病棟常駐で変わる管理栄養士のあり方
大会2日目のシンポジウム「診療報酬改定後の栄養士業務の変化とアウトカム」では、宮澤靖代表理事他3名の管理栄養士が登壇。近年の診療報酬改定では栄養に関する加算が増えているなか、それぞれの病院での取り組みの発表や、将来に向けての課題などが討議された。
宮澤代表理事は所属している東京医科大学病院での事例について「2019年に着任し、3年かけて管理栄養士の病棟常駐体制を実現した。2022年の診療報酬改定で特定機能病院での入院栄養管理体制加算が新設されたため、その前後の管理栄養士の業務の変化を調査した。すると、病棟の滞在時間が長くなるのは当然として、カンファレンスや回診も2倍になり、医師と管理栄養士の相談件数が急激に増加し、管理栄養士と他職種への提案・相談件数も増えた」と報告した。
社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院栄養部の山本あゆみ氏は、「2013年に管理栄養士は7名だったが、管理栄養士の役割を拡大させ、病棟に常駐して栄養学的に患者のサポートを担う管理栄養士をめざして、2014年から病棟常駐を開始した。昨年には全病棟への配置が完了し、管理栄養士の数は21名となった。栄養部を臨床栄養室と給食管理室に分け、業務の棲み分けを行うことで、病棟常住のできる環境を整備した」と報告した。病棟常駐の体制が整ったことで全患者に対し適切な介入が可能となり、管理栄養士の介入件数は2013年から2019年で約11倍に増加したという。
今後の課題として山本氏は「栄養管理の質を維持するため、これまで作り上げてきた教育プログラムをさらに充実化させるとともに、休みのスタッフのフォロー、産休などにも対応できる盤石の体制を作り上げたい」と語った。
神奈川県済生会横浜市東部病院栄養部の工藤雄洋氏は「2007年の開院時に管理栄養士9名でスタートし、NST加算を機にNST専従で2名増員。患者支援センターの開設により入院前から患者の栄養介入を行うため2名増員。そこから病棟単位で行うサテライト型のNST稼働を目指して5年かけて5名増員。さらにはICUへの専従化や早期栄養介入管理加算により救命病棟への専従化を開始し、現在は管理栄養士21名の体制となっている」と戦略に基づく計画的な増員を行ってきたことを報告した。
さらに工藤氏は「管理栄養士にとって近年の診療報酬改定は追い風になっていると思うが、その一方で、今後、『管理栄養士が外来や病棟に配置されて何が良くなったのか』が問われる時代がやってくる」と管理栄養士の役割が増えることで、責任も大きくなることを強調した。
マンパワー不足を自ら打開する意識改革を
シンポジウムの討議では、会場の聴衆から「アウトカムを示していく上で、入院・外来にかかわらず、臨床業務のなかで専門分野を特化したほうがよいのか」という質問があり、登壇者からは、まず基礎をしっかり習得し、ジェネラリストとして育成した上で、専門性を見出していくことの重要性が示された。また、部署を分けて固定化するより、ローテーションでオールマイティの管理が出来た方が病院としては運営しやすい面もあるので、その点での葛藤なども論じられた。
座長からアウトカムについて問いかけられると、薬剤などと違い即効性がないことから、臨床面でのアウトカムを管理栄養士だけで示すのは難しい面があることで意見が一致した。そのなかで宮澤代表理事は「部署を拡大して運営していくためには、施設管理者に理解してもらうために、目で見える数値を出していかなければならない」と経済的なアウトカムの重要性を語った。
話題が管理栄養士の未来に移ると、宮澤代表理事は「入院栄養管理体制加算をすべての医療機関に落とし込むのが私のミッションだと思っているので、それを完結していきたい」と語ったが、そのための課題も多いと指摘。現在、入院栄養管理体制加算が取れていない特定機能病院では、その理由としてマンパワー不足が挙げられていることについて「病棟常駐体制を目指せなければ、管理栄養士のマンパワーがこの先、より不足していくことになる」と話し、中堅からベテランの管理栄養士の価値観の変革が求められていることを強調した。
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