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特別連載 宮澤靖代表理事が歩んできた道(下) | 2017年5月

血まみれで白衣をつかむ手…
命をかけて栄養サポートする

3回にわたり、栄養経営の道を切り拓いてきた宮澤靖代表理事の歩みを、ご自身のお話から振り返る連載の最終回です。今も宮澤代表理事が心にしっかりと刻んでいる、アメリカで学んだこととは。

宮澤代表理事

「患者さんの心を診る」ことの重要性

1993年、「本場のNSTを学びたい!」という熱い想いを抱き、米国・エモリー大学医学部附属病院の臓器移植外科に飛び込みました。あるとき、疲労が極限状態となり、休みたい一心で輸液処方をすべてノーチェンジにするという大失態を犯しました。これが原因で、一時は帰国しなければならない状況にまで陥りましたが、「もう一度、1からやり直せ」という師匠の言葉に救われ、エモリー大学医学部附属病院で、2年半の研修を行うことができました。

「医療従事者は病気だけでなく、患者さんの心を診なさい。栄養管理をすることは、患者さんの命をお預かりしているということ。そこに誇りを持ちなさい」

これは私の師匠が毎日のように言っていた言葉です。患者さんの血液検査値の推移を単なる数字としてとらえ、ノーチェンジで輸液処方のチェックをした私は、そのことがまったくわかっていなかったのです。数字の推移の背景にある患者さんの苦しみを傾聴することができなかったのですね。以降、今でも常に「患者さんの心を診る」ことを肝に銘じて取り組んでいます。

救命救急外来で学んだ命に向き合う姿勢

もう1つ、アメリカで学んだ貴重な経験があります。渡米して2年後、私は病院の正職員として採用されました。給料をいただく身分となったのですが、当然ながら薄給であり、それだけで生活していくのは難しい金額でした。そのため、師匠が病院で最も時給の高いアルバイトを紹介してくれました。それは、救命救急外来での仕事です。銃で撃たれて血まみれになった方、全身熱傷で黒こげ状態で運ばれてくる方など、日本では考えられない重症患者さんが毎日何人も搬送されてくるのです。

交通事故で亡くなったお子さんを前にして、泣き崩れるご家族の姿を毎日のように目にしました。心肺蘇生に専念している救命チームの横で、ある重症患者さんの様子を見守っていたとき、血まみれの手で白衣をつかまれ、「助けて……」と言われたこともあります。

そんな経験を毎日重ねていくうちに、「中途半端な姿勢で患者さんにかかわることは罪だ。命をかけて病と戦っている患者さんに対し、こちらも命をかけてサポートしなければならない」と、深く心に誓うようになり、現在に至っています。

皆さんのご施設のベッドに仰臥されているご高齢の方々は、戦後の焼け野原のなかから今の素晴らしい日本という国を創ってくださった方々です。その方々の栄養管理において、手を抜くようなことがあってはなりません。命をかけてこの日本を創ってきてくださった方々に対し、私たちも命をかけて栄養で皆様を支えていかなければならないと強く思います。(完)

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