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NME REPORT ~栄養経営士活動報告 Vol.9
パートナーシップのあり方を見直して
施設と給食会社の垣根をなくしたい
もともと病院で管理栄養士として勤務をしていた小林祐貴さん(株式会社日本栄養給食協会栄養部)。委託給食会社と仕事をしていくなかで、給食会社の栄養士・管理栄養士の教育の重要性を感じたと言います。現在は給食会社の本部で献立作成のほか現場の栄養士・管理栄養士のサポートも行っている小林さんにお話をうかがいました。
栄養分野の問題解決に向けて
委託する側からされる側へ
――病院から委託給食会社に転職をされたそうですね。
以前は病院に勤務をしていて、病院側の管理栄養士として委託給食会社と関わっていました。新入社員の方が配属されてくるので、一緒に仕事をするのですが、仕事をする上での意識の部分で疑問に思うことがありました。
アレルギーのある患者さんにその食品の入ったものを出してしまったことがあり、その時は患者さん本人が摂取する前に気づいてそこにいた看護師さんに伝えたので大事にはならなかったのですが、そのことについて注意したときにあまりその重大さを理解していないように感じたんです。
管理栄養士の仕事として「食事を提供する」ということについての責任であったり意識であったり、そういった部分は直属の部下であれば当然しっかりと教育をします。しかし、それが委託する側とされる側という関係性があるなかでこちらが教えないといけないのか、そういった教育体制が会社にないのか、とモヤモヤした感じが残りました。
そんなときに栄養経営士の基礎講習で、宮澤先生が「病院の管理栄養士が病棟業務をメインとするためには、給食管理に関するところは信頼のおける委託会社にお願いする」とお話しされているのを聞いて、「今の委託会社は本当に大丈夫なのだろうか?」と疑問を持ちました。委託する側とされる側が同じレベルでなければコミュニケーションも十分にとれませんし、同じ思いを持っていないと給食の質を保つことも難しくなってしまいます。
そんなことを考えているなかで、委託給食側で管理栄養士のモチベーションを上げて、質を高めていくということも大切な仕事なのではないかと考えるようになったのが転職のきっかけです。
――病院から受託する側に移られて、印象などは変わりましたか?
病院にいたときには一部の栄養士としか接してはいませんでしたが、実際中に入っていろいろな方を見ると、例えば高齢者施設だったら、食べられるものが限られているなかでどういう食事を出したら喜んでもらえるかを考えていたり、幼稚園保育園であれば園児たちに喜んでもらうためにおいしいだけではなくて見た目や盛り付けを工夫していたりと、意欲的に働いている方が多くいて、それまでの印象とは変わりました。
ただ、これはなかなか解決しにくいかとも思いますが、配属先によって、自分たちで献立を立てて提供された後まで見える場合と、施設側が建てた献立をつくるだけの場合で比較してしまうと、どうしてもモチベーションの差が出てきてしまいます。
言われたことをやるだけだったとしても、その場所で管理栄養士としての知識やスキルを少しでも必要とされて、専門的な部分も忘れずにやれる環境であればやりがいもあるのかなと思うのですが、本当に現場作業だけになってしまうと、自分が必要とされているのかわからなくなってしまうこともあるかもしれません。ですので、そういう現場が中心になってしまう栄養士に対して、何かできないのかというところが今後の課題かなと思っています。
現場での困りごとに対応するためには
しっかりと現場を見ることが不可欠
――現在はどのようなお仕事をされているのですか?
主な業務としては献立作成になります。受託先には栄養士が配属されていない小さな診療所や幼稚園・保育園などもありますので、そういったところの献立の作成がメインです。今、本社に常にいるのは私含めて4名、在宅ワークの2名と合わせて6名体制です。それぞれ担当が決まっている施設があるので、「こんなことがあった」といった情報共有を通してお互いのケースに活かせるようにしています。
ほかにも現場の各施設に配属されている栄養士から困ったことがあったりすると相談や問い合わせの連絡が来るので、その対応も行っています。また、主に経験年数のまだ入職して間もない3年目ぐらいまでの栄養士が中心になりますが、年間スケジュールを立てて栄養士の研修会なども行っていて、その手伝いも行っています。
――現場の栄養士からの問い合わせはどのような内容のものがあるのでしょうか?
例えば「腎臓が悪いので対応した献立で出してほしい」という依頼があった時に、高齢者施設では腎臓病に対応した献立を用意していない場合もあります。そういう時にどういったことに注意したらよいのかを伝えたり、補助食品が必要になった時にはその施設に納品されている業者はどこで、どういう商品が入っているのかを確認して、そこから実際に使える商品を選んで、ということもあります。
小さな診療所だとソフト食を一から説明するといった場面もあります。種類を増やしすぎると混乱してしまうこともあるので、使いやすいものを選別して伝えるなど、患者様の立場を考えたうえで、できるだけ現場の負担が増えることのないように心がけています。
やはり話を聞くだけだとなかなかわからないことも多いですし、その施設の規模や厨房の機材等も理解していないと適切な提案ができないこともあるので、できる限り現場の様子を実際に見て、実際にできるかどうかという視点からアドバイスをするということも大切にしています。
本社にいる立場ですと、その施設の細かい事情や現場にいる栄養士の本当の気持ちといった部分がなかなか見えないこともあります。そこを知るためにはコミュニケーションにしっかりと時間をかけないといけないと思っています。
委託する側/される側という線引きをなくして
同じ栄養部門の仲間として接してほしい
――受託側から病院の管理栄養士に伝えたいことはありますか?
お願いしたいのは、病院や施設側の栄養士さんの方から、受託側の管理栄養士・栄養士に対して情報提供等をしていただきたいということです。
「今栄養の分野ではこういうことが注目されている」「こんな新しい流れがある」といった情報をスタッフ間で共有することがあると思うのですが、そういうときに「委託だから」といって線を引くのではなく、同じ栄養部門のスタッフとして見ていただいて、情報を共有してほしいです。そういった現場のスタッフに向けた情報提供も本社としてやっていかなければいけない部分ではありますが、どうしても手が届かないところも出てきてしまいます。給食の現場だけの仕事になってしまうとそういった情報が入りづらい環境になるので、そこはぜひお願いしたいです。スタッフのモチベーションアップ、スキルアップにつながりますし、それは病院や施設側にとってもプラスになるはずです。
もちろん情報の共有ということだけでなく、同じ管理栄養士・栄養士として普段からコミュニケーションを取れるのが一番良いとは思います。給食会社の側からはなかなか前に出られないこともあるので、病院・施設側から一歩歩み寄っていただけると嬉しいですね。
――今後やってみたいことや取り組みたいことを教えてください。
どうしても受託給食会社にいる立場とその病院に所属している立場とでは情報の入り方に違いがありますので、私自身の管理栄養士としてのスキルアップという部分も忘れないために、最新の医療現場や話題になっている情報へのアンテナはしっかり立てておかないといけないと思っています。
そういった最新の情報をしっかり持ったうえで、職場において悩みを抱えたりしている管理栄養士・栄養士をサポートしていきたいです。そのためにはフットワークを軽くして、現場に足を運んでしっかりとコミュニケーションを取っていくことが大事だと思っています。「あの人に相談してみるとアドバイスしてもらえるかも」と思ってもらえれば嬉しいですし、そのためには私自身の存在を社内でアピールしていくことも必要だと感じています。そういった活動を通してこれまで以上に栄養士、管理栄養士に寄り添える存在になれるように取り組んでいきたいです。
【企業概要】
株式会社日本栄養給食協会
宇都宮市下岡本町4105番地(本社)
事業内容:給食の業務受託/献立作成、栄養指導、給食管理指導/治療食、老人食等の宅配/郊外型ベーカリー店の経営/アグリ事業/食品加工事業