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NME REPORT ~栄養経営士活動報告 Vol.4
実績を残すことで信頼を勝ち取り、
多職種とのさらなる連携を
高度急性期から療養病棟及び精神神経科病棟も有するケアミックス型の2次救急病院の栄養科に所属する栄養経営士の有坂香澄さん(佐野厚生総合病院栄養科)は、周囲の看護師、医師と連携を深めながら、医療の一翼を担う管理栄養士として院内でしっかりと存在感を示している。
他職種との連携で苦労する方も多いなか、どのような工夫があったのか。有坂さんにお話を伺った。
看護師の手が届かないところを管理栄養士としてサポート
栄養経営士の有坂香澄さん |
――なかなか病棟に出られない、病棟に行くと緊張してしまうという話をよく聴きますが、有坂さんの場合はいかがでしたか?
最初に病棟に行くときは慣れない環境だったこともあり、一歩踏み込むことが大変でした。看護師も医師もすごく忙しくされているので、声を掛けるタイミングがわからないということもありますし、人数が多いので顔と名前をまず覚えることが大変で(笑)。「〇〇さんの担当看護師は△△さん」がわかっても△△さんが見つけられなかったり、仕事以前の人との関わりという部分の話だとは思うのですが、慣れるまではなかなか大変でした。
そんな時にベテランの看護師の方が気にかけてくださって、声を掛けていただけたことがとてもありがたかったです。少しずつ親しくなってくると、「この患者さんはこういうご飯が出ていて、食べられていないんだけど変えられない?」といった質問もしてくださるようになりました。それに対してこちらも提案させていただき、それが良い方向にいくと「食事のことは栄養士に頼むとなんかしてくれる」と思っていただけたようで、相談も増えてくるようになったんです。
こちらも食事のときにはベッドサイドで患者さんの話を聞いて、その話を看護師さんにフィードバックするようにしました。看護師さんは食事中に患者さんからゆっくり話を聞いたりする時間はなかなかとれませんので、そこでの情報には耳を傾けてくれましたし、そういった動きを続けていくうちに看護師さんに信頼していただけたのか、さらにスムーズに連携できるようになりました。
――看護師はもちろんですが、医師に対してもプレッシャーを感じるという話もよく聴きます。
確かに、医師との連携となると看護師以上に緊張してしまうのですが、そこも看護師さんが間に入ってつないでいただけたということもあって、病棟のなかで存在意義がアピールできるようになりました。診療科によっても異なるのですが、栄養に対してとてもポジティブに捉えてくれる先生のなかには、プランやスケジュールを任せると言ってくださる先生もいらっしゃいます。もちろん心配な部分は確認しますが、こちらで考えたものが基本的に採用していただけるので、責任感もある反面、非常にやりがいも感じています。
もちろん、診療科によっては栄養についてあまり関心がない先生もいらっしゃいます。そういう場合には、栄養士として気づいたことや、患者さんが食事や栄養について悩んでいたり困っていたりすることがあれば、先生へ情報を伝え、提案をさせていただけるようにしていければと思っています。
全部が全部期待に応えられる段階ではありませんが、主要なところから少しずつ、できる範囲でやれることをしっかりやることを心掛けています。それで良い結果につながれば、ほかの先生も目に留めてくれるはずなので、できるところから広げていきたいと思っています。
クリニカルパスへの栄養指導の導入で件数アップとモチベーション向上
――食事や栄養指導をクリニカルパスに導入したときのお話を伺いたいのですが。
さまざまな職種との連携が深まり、チーム医療のなかで管理栄養士としての立ち位置が明確になってきたなかで、消化器外科の先生から術後の食事開始のスケジュールや栄養指導をパスに入れてはどうかと声を掛けていただきました。パスの導入については、チームのなかで管理栄養士としての存在価値をつくれていたことと、栄養に理解のある医師がいてくれたことが大きかったと感じています。
いざ始める際には、パス担当の看護師とは細かい部分まですり合わせをしました。術後の食事開始が段階的に進むなかで、食形態や食種、食材については看護師さんもわからないですから、「このタイミングではこの禁止コメント入れていただいたほうが安全です」といった具体的な話をさせていただきました。それで医師に最終確認をしていただいて、実際に運用を開始しました。
コロナ禍で予約入院が減少するなかでも、栄養指導件数は前年より1.4倍になるなど、パスに導入できたことによる成果も出てきていますし、パスに入ったことで自分たちの業務がきちんと認められた、という感覚もあって、栄養科のなかでも少しずつ意識が変わってきたと感じています。
特に変わってきたのは、私も含めて栄養科のなかで“学ぶことへの意欲”が上がってきたことです。病態栄養の専門栄養士を取る職員が出てくるなど、自分で調べてプラスアルファの資格取得を目指すという流れができていて、スタッフのみんなが前向きになっている姿勢が見えるようになってきました。他職種から同じ医療職として見られるという意識が、モチベ―ションのアップにもつながっています。
外来指導の充実に向けてエビデンスのある栄養指導を
――今後の目標や関心のあることについてお聞かせください。
術前・術後の外来の栄養指導には力を入れていきたいと思っています。まずは術後の患者さんに対して、退院時の指導はあるのですがその後も継続的に入るということができていないので、必要な方には入れるようにしていきたいです。開業医の先生がカバーしてくれているなら問題はないのですが、そういう形ができていないのであれば外来でフォローしていきたいです。
そのためには、患者さんに「継続したらいいことある」と思ってもらえるような、結果を出せる栄養指導が求められます。「だったら栄養士さんの話を聞こうかな」という気持ちを引き出していけるようなかかわり方をしていければと思っています。例えば外来で化学療法を受けている方であれば食事に悩むことも多いと思うので、そこで栄養士として力になれるということを伝えていきたいですね。
【病院概要】
佐野厚生農業協同組合連合会 佐野厚生総合病院
栃木県佐野市堀米町1728
0283-22-5222
病床数:531床(一般376床、感染症4床、精神51床、療養型100床)