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NME REPORT ~栄養経営士活動報告 Vol.3
他部署との連携をきっかけに
栄養課の新たな動きを推進
他職種との連携、部署の増員、全面委託への移行など、「やりたいけどなかなか難しい…」感じている方も多いのではないだろうか。
一般・療養・回リハ病棟を併せ持つケアミックス型の病院に勤務する栄養経営士の小澤年充さん(医療法人社団上総会 山之内病院診療技術部栄養課)は、部署が一人になるという厳しい状況から自分自身で積極的に動き、それらの希望を実現させてきた。
現場ではどのようなご苦労があったのか、どのように切り拓いてきたのかについて、小澤さんにお話を伺った。
一人部署になったことを契機に他職種との積極的な連携をスタート
栄養経営士の小澤年充さん |
――もともと給食関連の業務が多く、積極的に病棟に出ていく機会はあまりなかったそうですね。
病棟から要請があれば嗜好調査に行くのと最低限のアレルギーの確認程度しかできておらず、栄養士が積極的に病棟へ出ていくという環境ではありませんでした。宮澤先生の勉強会等で聞く急性期の病院の働き方とのギャップは感じていて、急性期の方みたいな働き方ができればという思いは持っていましたが、実際にはなかなか難しいのが現状でした。
そんな折、前任の課長が不在になって栄養課の職員が自分だけになってしまいました。業務量も増えて自分だけでは患者さんの情報も十分に集められないという状況のなかで、比較的年齢が近くコミュニケーションが取りやすかったリハビリ課と話すことが多くなってきたんです。
リハビリ課では患者さんの状態や活動量等も把握されていますし、退院先の情報等もまとめていましたので、これまで栄養課だけでは収集できなかった情報を把握できるようになりました。リハ栄養の重要性がかなり言われてきた時期で、リハビリ課のほうも運動量に合ったエネルギー設定がしたいということで栄養に対して興味を持ってくれていたこともあり、カンファレンスに参加させてもらうようになりました。そこから他職種との接点が増えて、職種間の連携ができるようになりました。
どの職種も栄養に関心があり、管理栄養士に期待している
――他職種との連携を進めていくなかで、気を付けたことなどはありますか?
管理栄養士は自分で物理的な処置ができるわけではないので、「誰かと一緒にやる」ことを前提として動かないといろいろなことをやるのは難しいという点は、実際にやり始めて感じるところかなと思います。
ただ、他職種と接するようになって一番感じたことは、皆さん「栄養に対して興味がある」ということです。知識があるわけではないですが必要性は理解していて、「やらないといけないけど何すればいいの? 誰がやるの?」という状況があったようで、管理栄養士が入ることに対しては皆さんウェルカムな状態でしたし、こちらも入りやすかったですね。
――管理栄養士の方からは「看護師とのコミュニケーションが苦手」という声をよく聞くのですが。
もちろん常に忙しくされている職種ですし、コミュニケーション取りづらいと感じることはあるかもしれませんが、自分はタイミングを見ながら「〇〇さんの件なんですが、今いいですか?」と聞くようにしています。患者さんの急変があって忙しいという場合であれば、「どの患者さんですか?」と聞くことで情報の共有にもなりますし、誰にどういうことが起きているのかも把握できます。ケースバイケースで声の掛け方とかに気を付ければ、それほど難しいと感じたことはありません。
看護師の側も食事、栄養の摂取状況については把握していますから、こちらが行って「〇〇さんの件で」と言えば「ああ、〇〇さん食べてないよね」というのはすぐわかってくれます。看護師は患者さんへの想いが強いこともあって、患者さんにとってプラスになる話であればちゃんと聞いてくれますし、そんなに構えなくてもいいのかなと思います。
全面委託への転換と部署の増員を実現
――全面委託への転換や職員の増員はどのように実現させたのですか?
もともとは部分委託だったのですが、栄養士が1人になってしまったことで、業務量的にこなすのも厳しく残業時間も増えているという現実があり、この機会に全面委託に切り替えようと考えました。地域の栄養士会で話をしたりするなかで近隣の病院では全面委託が多いという情報は持っていたので、そういった情報を持って院長に相談してみたところ、院長も周辺の他の病院の院長との情報交換のなかでそういった事実は把握されていたようで、全面委託への移行については抵抗もなく受け入れていただきました。
また増員については、施設基準上は問題ないとはいえ、病欠等もありますし、少なくとも2名以上にはしてほしいという話はしていて、了承はしてもらっていました。それで求人は出していたのですがあまり応募がなくて、それがこのタイミングで2名来ていただいて、取れるときにしっかり採用しておこうという病院としての判断もあり、2名採用していただいて現在は3名体制となっています。
全面委託への移行、増員という部分については院長の理解があったということも大きいですが、こちらとしては自分の部署の状況はもちろんですが、周辺の病院の情報もきちん伝え、どうするのがよいのかを提案できたのがよかったのではないかと考えています。
増員されたことと給食業務移行の目途も立ったことで、病棟担当制を導入することにしました。病棟常駐という形が理想ではあるのですが、まずは病棟担当制にして、自分がフォローに入る形で運用してみようということでスタートさせました。
管理栄養士が入ったことで、例えば患者さんが食事を食べられないという状況の時に、「なんで食べられないのだろう?」という視点が入るようになったという点は、病院の体制としても大きな変化なのではないかと感じています。食欲不振の原因を考え、他の職種の方と相談しながらプログラムを見直してみるといったこともできるようになったので、栄養部門の専門職として貢献できているのではないかと思っています。
さらなる学びを通して患者さんのQOL向上に貢献
――今後の目標や関心のあることについてお聞かせください。
当院の院長が糖尿病と透析の専門医を持っていますが、腎臓の分野については非常勤の医師で補っていただいている部分があります。院内のスタッフで、CKDの保存期から透析導入までの支援をする役割の強化は必要だと感じているので、個人の目標としては腎臓病療養指導士の取得に向けた勉強をしながら、その部分をフォローし、医師の負担軽減にもつながればと考えています。
栄養課としては、多職種連携を進めていくなかで他の職種の情報も知らないと動けないということがだんだん見えてきたので、その部分を勉強していけたらと思っています。他職種の仕事ができる必要はないのですが、何をやっているのかは理解しておかなければならない、というのは連携の上で必要だと感じています。栄養士として関わる部分だけ見ていればよいというのではなく、自分たちのやっていることと他職種のやっていることがきちんと合致しているかどうかを確認できるようになることで、これまで以上に患者さんのQOL向上に寄与できるのではないかと思っています。
【病院概要】
医療法人社団上総会 山之内病院
千葉県茂原市町保3番地
0475-25-1131
病床数:137床(一般53床・療養54床・回復期20床・地域包括ケア10床)