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令和6年能登半島地震 被災報告| 2024年11・12月
非常時を乗り切るのに必要なのは
臨機応変に対応する力(2)
令和6年能登半島地震(令和6年1月1日発生)で被災し、DMATの拠点にもなった公立能登総合病院の栄養部には2名の栄養経営士が在籍している。その、江成雅美さんと栄養士長である町駒珠美さんに、震災発生からの動きや対応についてうかがった。
★前編からの続き
院内の情報共有と支援物資の供給は問題なし
震災後は毎朝、院内の対策本部会議があり、そこで各部署の状況や人手の必要性の有無、給水車の情報などが共有された。普段から横の連携も取れており、院内の情報伝達はスムーズだったという。
DMATは別棟で活動していたため、一部の職員以外が顔を合わせることはなく、業務に影響は出なかった。
行政からは連絡がなく、石川県栄養士会から数日後に、個人宛に支援要請の必要についてメールで問い合わせがあった。しかし、現場は落ち着いてメールを読んで返せるような状況ではなく、結局どこにも連絡を取らないままとなった。
「病院には三日分の備蓄がありましたが、入院患者が一番少ない時期でしたので、三日以上持たせることができました。また、非常時には冷凍の肉や魚、野菜など供給されるよう毎年県内の業者と契約しており、それが約束通り届きました。メーカーを中心とした企業からの支援物資も病院に届き、食糧面での苦労はありませんでした。ただ、これは震源地が奥能登で物流への影響が少なかったためで、金沢付近が震源地だったら届かなかったと思います」(町駒さん)
また、備蓄食については「50食入りのパンやお粥を用意していたところ、少量で良いのに大袋を開封しなければならなかった」という反省点があった。以降は見直しをかけ、栄養部以外の人でも準備が可能で、水を使わず、すぐに提供可能なものとして1日分は個包装のパン食とした。また現在は、砕けば嚥下食にもなり、保存期間も25年と長期なサバイバルフーズの備蓄を検討しているそうだ。


マニュアルをベースにイレギュラーに対応
今回の震災で町駒さんが強く感じたのは「非常時には臨機応変な対応能力がなければダメだ」ということだった。病院にも栄養部にも非常時マニュアルはあるが、基本的なことは頭に入っており、震災直後はそんな余裕がなかったこと、スタッフが機敏に動いてくれたこと、またイレギュラーなことが多すぎて、町駒さんがマニュアルを開くことはなかったという。
「ライフラインは断水や停電等にあわせた対応が必要になり、マニュアルに頼りきりでは非常時を切り抜けられません。普段から『これは何かで代用できるかな、こういうことがあったらどうしようかな』と折に触れて考えても良いかもしれません」(町駒さん)
また、被災後、時間が経つと当時の記憶が薄れてしまうため、部署内で新しく記録係の追加を検討している。
非常時に必要なものは「トイレと衛生用品」
物資として必要だと感じたのは「非常用トイレや手や体を拭く衛生用品」。水道が長期間止まったため、職員のトイレや、体や髪をキレイにする衛生用品の不足が問題となった。
とくにトイレは大変で、使用しないときは吸水シートよりも凝固剤のほうが置き場所も取らず便利だとわかった。今後は病院側が準備してくれることになったが、支援物資のひとつとして支援する側がリストに入れておいても良いかもしれない。
これ以外にも町駒さんと栄養部のみなさんが「必要だ」と感じたもののリストを記載しておくので、参考にして欲しい。また、その他の情報として、栄養部で記していた「忘備録」を提供いただいたので、抜粋掲載させていただいた。被災時の貴重な記録として、ぜひご覧いただきたい。
最後に町駒さんは「今回の震災では、病院スタッフの協力や各業者の対応、支援物資のおかげで3食提供するこができました。道路が寸断されて通勤に時間がかかったり、自宅が半壊・全壊していたり、自宅に家族をひとり残しておけなかったり、といった状況のなか勤務していましたが、スタッフみんなが『絶対3食提供しよう』と動いてくれました。患者様からは毎食、食札にメッセージをいただき、みんなの励みとなりました。反省することも色々ありますが、すべて今後に活かしていきたいと思います」と締めくくった。
* * *
今後も事務局では、随時、災害や非常時の情報・対策について会員に情報共有を行う予定である。情報をお持ちの方はぜひ事務局まで連絡して欲しい。

