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令和6年能登半島地震 支援報告| 2024年10月

能登半島地震から1年を前に
被災地での食支援の実際と心構えを知ろう(2)

令和6年1月1日に起きた能登半島地震では、発生直後から全国の医療関係者が支援に入り、現地で活動を行った。当協会の田中智美理事も北海道栄養士会からの要請で現地支援に入った一人である。そのときの様子や、支援する際の注意点、災害に対する心構えなどを田中理事にうかがった。


★前編からの続き


被災地に見る食支援で重要な口腔ケアの状況

避難所を回る中で、多くの高齢者から聞かれたのが、支援品の食料が硬くて食べられないという問題です。実際にレトルトパックのご飯を提供している現場に立ち会いましたが、手をつけずにいる高齢者の方々もいました。「ご飯は食べたいけど硬くてね…」「避難するときに入れ歯忘れてきちゃってね」「最近痩せちゃって入れ歯が合わなくて痛いんだ」そんな声をいくつも耳にしました。

レトルトご飯は、あらかじめ大さじ1杯程度のお水を加えてから長めに温めると、軟飯になります。そのご飯をおいしそうに召し上がってくれた姿は今も忘れられません。

拠点の保健センターでは、富山県の歯科医師会の皆さんにお会いしました。少しの時間でしたが情報交換をさせていただき、食支援を行うには歯科の力が不可欠であることを実感しました。震災から月日が経つと、どうしても支援が注目されにくくなります。しかし、ライフラインが復旧した後も、食支援や口腔ケアは必要であり、長期的に支援する必要があると感じました。

穴水町の保健センターで一緒になった富山歯科医師会のみなさんと
保健センターで一緒になった富山歯科医師会のみなさんと

支援の際はタイミングをしっかり見極めて

被災地に支援に入る際、とくに気を付けなければならないことがあります。それは「してあげたい、という気持ちだけで行動しては、相手を苦しめてしまうことがある」ということです。

たとえば、会話を盛り上げようと家族の話をしても家族を亡くしているかもしれませんし、喜ばせようと希望的観測で話をすると、ダメだったときの失望感がとても大きくなってしまいます。良かれと思ってやった行為が、被災者の気持ちを大きく傷つけてしまうのです。

重要なのは「被災者がして欲しいことを、して欲しいタイミングで行う」ことです。被災地の支援では、相手がどういう状況なのか、何を求めているのかをしっかり見極めてから、必要な支援を行うようにしてください。

徳島県が出している『災害時食支援ブック』
参考にした徳島県作成の『災害時食支援ブック』

有事に何ができるか、自分の強みを知ろう

もう一つ、皆さんに伝えたいのは「決して、他人事ではない」ということです。

災害は、どこにでも、誰にでも、起こり得るものです。私は北海道胆振東部地震で被災しましたが、それまで震災に遭うとは思ってもみませんでした。今回能登の支援に参加し、震災を支援する側と支援を受ける側のコミュニケーションの重要性を感じました。行政、医療、福祉等の管理栄養士同士の横の連携も、しっかり考えていく必要があります。

誰しも、支援に行く側、受ける側、どちらの可能性もあります。「食支援のプロ」として、もしものときに自分には何が求められるのか、何が強みなのかを、ぜひ考えてみてください。

▼徳島県作成の『災害時食支援ブック』はダウンロードが可能です。ぜひ参考にしてください。
『もしもの時に備える災害時食支援ブック』作成しました!【とくしま健康づくりネット】