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書籍出版記念セミナー| 2024年9月

問題山積の病院・介護施設の給食
先々を考え今から厨房改革を

2024年9月27日(金)に東京足立区のシアター1010内視聴覚室にて書籍『病院・介護給食経営改革~どうする!?未来~』(一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会監修、株式会社ミールシステムほか執筆/日本医療企画刊)の出版記念セミナーが行われ、当協会の宮澤靖代表理事が特別講演を行った。

今後はセントラルキッチンか完調品の時代

セミナーの前半で登壇した宮澤代表理事は、講演のはじめに人口動態に伴う医療の変化について説明した。今後の医療費は2019年に「うまくいけば35兆円、少子高齢化で高騰すれば50兆円」と試算されたが、2022年現在で46兆円まで膨れ上がっていると指摘。「このままでは国民皆保険がなくなる可能性がある。それだけは何としても阻止しなくてはならない」と主張し、病院・介護施設の食事はこれからの未来を左右するくらい重要であると認識して欲しいと訴えた。

病院・介護給食は人手不足、厨房機器設備の老朽化、経費の高騰で予算が不足しており、宮澤代表理事は「もうクックサーブで手づくりの時代ではない」として「セントラルキッチンか完全調理済み食品(完調品)の2択、これ以外ない」とあえて断言し、参加者に強く印象付けた。

また、「こうして今、警鐘を鳴らしているのは5年後10年後を見据えているから。今まだできているからこそ、次の一手が効く。給食システム自体を抜本的に変えないといけない時代が来ている」と語り、早急に改革が必要であると主張した。

熱く参加者に訴える宮澤靖代表理事
給食システムの改革を熱く語る宮澤靖代表理事

オリジナル完調品の導入でコストを半分に

宮澤代表理事が勤務する東京医科大学病院では、全面委託の状態で2025年4月から完調品を導入し、個包装で届いたものを再加熱して配膳する給食システムに変更するという。さらに、市販の完調品を使うのではなく、東京医科大学病院のメニューで完調品をつくり、トレイメイクまで済ませて搬入するとのことで、厨房では「食札を並べてクッカーに入れるだけ」になる。

「現在はまだ朝4時から22時まで厨房スタッフが働いているが、これが6時半から21時までで済むことになる。単純計算ではあるが、人員も80名から40名に減らせ、委託企業への支払いも年間6億円から3億円に減らせると試算している。差額の3億円は設備投資に回すことができ、委託企業の余った人員は他の施設の厨房スタッフとして活用してもらえば、そこの管理栄養士が病棟に行けて、患者のケアができるようになる」と説明。自院だけでなく他施設まで視野に入れた改革であることを伝え、病院の給食システムの改革が院外に及ぼす影響を示唆した。

給食管理と栄養管理をセパレートし
100%のパフォーマンスを

講義の最後で、宮澤代表理事は「病院の管理栄養士はワークバランスが取れていない。20年来話しているが、給食管理と臨床栄養の掛け持ちでは100%のパフォーマンスが発揮できない。セパレートすべき」と語り、「病院によって医師や看護師に大差はない。しかし、栄養には大きな差が出る。患者やその家族に『この病院は、栄養もちゃんとみてくれるのかなあ』等と思わせながら入院させることは、絶対に正義ではない」と力強く言い切った。

さらに「給食で儲ける時代ではない。ベッドサイドでの診療報酬は改定の度に上がり、国も病院管理栄養士の望ましい姿は病棟にいることだと言っている。病院の管理栄養士はベッドサイドに行き、給食管理はフードサービスのプロである委託企業に任せれば良い」と話し、古い給食システムとの決別の重要性を説いて、講演を締めくくった。

今求められているのは
2050年まで通用する給食システム

セミナーの後半では著者の代表としてフードサービスシステム構築コンサルティング会社の株式会社ミールシステム会長・窪田伸氏が登壇、書籍の内容を紹介した。

講演の冒頭で窪田氏は「これほど厳しい時代は初めて。これからは、お金がない、働き手はいない、物価は高騰する、という右肩下がりの時代。今までの常識から逸脱した考え方を持たなければ今後は通用しない」と語り、「これまでの経営概念を根底から見直す、ドラスティックな改革が必要」と訴えた。

壇上で話す窪田伸氏
著者を代表して登壇した窪田伸氏

その後は書籍の内容を紹介しつつ、何度も現在の給食経営の危機について言及し、最後に「給食システムに手を入れるには薬や注射といった小手先ではダメ、手術をしなければならない。2040年、50年に向けた新たな給食システムのデザインを組み立てていくことが求められている。今あることは、今はいい。だけどこの先は通用しない。このことを肝に銘じていただきたい」と抜本的な改革こそが解決のカギであることを強調してセミナーは終了した。

出版記念セミナーの会場のようす
会場は病院関係者、厨房機器メーカー、食品メーカー等の参加者で大盛況だった


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