お問い合わせ 資料請求

ニュースロゴ

第8回「全国栄養経営士のつどい」開催
全国から栄養経営士が東京に集結!

発表者の熱い思いと参加者の熱意で
会場が一体になった全国大会(1)

第8回「全国栄養経営士のつどい」東京大会は2024年3月9日(土)に秋葉原UDX RoomD(東京都千代田区)で行われた。今大会は現地会場メインで開催し、会場参加者たちは登壇者の発表に真摯に聞き入っていた。

在宅、地域での管理栄養士の役割が増大

第8回を迎えた「全国栄養経営士のつどい」は宮澤靖代表理事と秋山和宏副代表理事兼関東支部支部長のあいさつではじまった。ひさしぶりの会場メインでの開催に、宮澤代表理事は「顔と顔を合わせて学びを深めることはとても貴重な体験。ぜひ会場の仲間と交流し、自身の成長につなげて欲しい」と語った。

宮澤靖代表理事
開会のあいさつをする宮澤靖代表理事

秋山和宏副代表理事
関東支部支部長として秋山和宏副代表理事も登壇

最初の特別講演は厚生労働省医政局地域医療計画課外来・在宅医療対策室室長補佐の須永将広氏が「第8次医療計画が示す方向性と管理栄養士に求められる役割」のテーマで登壇。はじめに医療提供体制を取り巻く状況として、労働人口の減少や高齢者の増加、それに伴う医療需要の変化について説明した。

次に、第8次医療計画のポイントを提示し、今後増加していくと見られている在宅医療について詳しく紹介した。そのなかで、訪問診療では他職種に比べ栄養食事指導が低調であることを指摘。「今後は在宅を支える栄養食事指導、栄養管理が管理栄養士の役割として大きくなってくる」と話し、「急性期の医療機関は在宅の医療機関に向けしっかりと情報提供して欲しい」と呼びかけた。

その後は在宅医療の体制整備について、人材養成や支援事業について紹介、BCPの研修については「厚労省のサイトに良いテキストがあり無料でダウンロードできるので利用して」と情報を伝えた。最後に医療提供体制改革に関する今後のスケジュールを簡単に紹介し「2024年春を皮切りにさまざまな施策がスタートしていくことを知っておいて欲しい」と語り、講演を終了した。

須永将広氏
在宅での栄養の重要性を説く須永将広氏

業務改善、人材育成から被災地報告まで
多彩な内容の実践報告

次に、大会のメインである「栄養経営士による現場報告」が行われた。

今大会では4名の栄養経営士が登壇し、急性期病院・給食受託会社・クリニックや介護施設等で地域医療を支える医療法人・特別養護老人ホームと、背景がまったく違う発表者が集まった。

最初に登壇した医療法人渓仁会手稲渓仁会病院栄養部の須藤瑠衣さんは「食事オーダーに関する食事プロトコール導入~タスクシフト・タスクシェアへの貢献~」のテーマで発表。入院患者の食事オーダーにプロトコールを導入することで、医師の負担軽減につながるのではと考え、一部診療科でテスト導入した結果を報告した。

食事が病態に重篤な影響を与えないと判断された患者に適応したところ、医師・看護師ともに食事に関する不安や負担が改善、タスクシフト・タスクシェアにつながったほか、管理栄養士の困りごとも解消されたという。今後はこれを全診療科に広げていきたいと語り、発表を終えた。

実践報告を行う須藤瑠衣さん
須藤瑠衣さんは食事プロトコールについて発表

二人目は株式会社日本栄養給食協会栄養部の小林祐貴さん。「給食受託会社における栄養士育成~栄養管理の質向上のために~」のテーマで、自身が手掛けているスタッフ育成について発表した。

小林さんは「自立している」「病院を任せられる」を目標に管理栄養士・栄養士の育成を進めている。カリキュラムを四段階に分けて進めているが「今までやっていたことを変える」というスタッフの意識改革が難しく、時間がかかる課題であると説明。現在はまだ1病院だけで行っているが、ここでの取り組みがうまくいけばカリキュラムを会社全体に広げていきたいと展望を語った。

実践報告を行う小林祐貴さん
社内で栄養士育成に取り組む小林祐貴さん

三人目は石川県から参加した、クリニックや訪問看護等で地域医療を支える医療法人社団KaNaDeの荒川和世さんで、テーマは「令和6年能登半島地震による被災者(要介護者)の受け入れについて」。今年元日に発生した能登半島での震災について、現地の様子を写真で紹介するとともに、要介護の被災者を施設で受け入れた状況を説明した。

復旧の遅れについて、荒川さんは能登半島の先端に向かう一本しかない幹線道路が分断されただけでなく、能登の我慢強い人柄もあって被害が表に出にくいのではないかと語り、いまなお続く被災状況を伝えた。

震災後、荒川さんは看護小規模多機能型居宅介護と住居型有料老人ホームを併設した施設で、被災者である医療的ケアが必要な高齢のがん患者の受け入れを行った。今までに6名を受け入れ、2名が退所、2名をお看取りして現在も2名が入所しているという。同じく被災者を受け入れている連携先の病院からは引き受け依頼が次々来ている状態でかなり厳しいが「地元に帰りたいという強い希望に寄り添い、被災者の一助になればと思っている」と心境を伝えた。

実践報告を行う荒川和世さん
被災患者受け入れの状況を語る荒川和世さん

最後は社会福祉法人熊本菊寿会特別養護老人ホームさわらび栄養科の井原香織さんで、「食事提供方式変更への取り組み」をテーマにZoomで発表した。

当初、クックチル方式だった給食を差別化のため段階的にクックサーブ方式に変えたものの、人員不足により厨房業務に時間を割かれて管理栄養士としての仕事ができなくなり、見直しを決意。完調品を利用した食事提供に変えるため、施設内で説明会や試食会を多職種と行い、導入が決定したという。

導入後は作業効率があがり、栄養管理業務の時間も増えたものの、利用者からは「味が変わった」等の声が届いていると紹介。しかし「食事サービスを止めないことが重要」と考え、今までの体制そのものを見つめ直す時期にあるのではと語った。今後は作業工程の見直しや味の向上、スタッフがやりがいを感じる環境づくりに注力する予定だ。

実践報告を行井原香織さん
熊本からZoomで参加した井原香織さん

どの栄養経営士の発表も、その施設ならではの課題とそれに対する取り組みが語られ、聞いている参加者が真剣な顔でメモを取り、質問する姿が印象的だった。普段は交流のない施設にあっても同じように悩み、また解決に向け進んでいく姿に力をもらった参加者も多いだろう。

次回も、一人でも多くの栄養経営士がそれぞれの現場で行っている取り組みや課題について発表していただければと思う。

座長の山下茂子理事(右)と真壁昇理事
座長を務めた山下茂子理事(右)と真壁昇理事

午後のプログラムのレポートはコチラ

協賛企業