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管理栄養士のための基礎医学講座~動脈硬化のガイドライン編~ | 2023年8・9月
イチから学ぶ動脈硬化性疾患ガイドライン
高脂質や飲酒などを改めて学ぶ
日本栄養経営実践協会九州支部は7月15日(土)、「動脈硬化のガイドライン」をテーマとした「管理栄養士のための基礎医学講座」を開催しました。この講座は管理栄養士が業務を行う上で必要な、基礎的医学の知識習得が目的とし、年に2回行っています。講師は九州女子大学家政学部栄養学科教授で医師の三浦公志郎氏が務め、会場での講座とライブ配信を行いました。
動脈硬化の定義からガイドライン改定まで説明
今回は2022年に改定された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」(日本動脈硬化学会)についての講義。前半は動脈硬化症の定義、病態や危険因子について振り返りました。
三浦先生は動脈硬化を起こしている血管を図で示し、一度動脈硬化症が起これば不可逆であると説明。昨年の人口動態統計の概況では、日本人の主な死因は虚血性心疾患が約15%、脳梗塞が約7%、血管性認知症・大動脈瘤解離が各約1.5%と動脈硬化症に起因するものが多数を占めており、一次予防・二次予防が必要だと改めて示しました。
同ガイドライン2007年版においても、「動脈硬化性疾患“診療”ガイドライン」から“予防”に名称変更しており、「動脈硬化性疾患の予防」を目指した内容となっています。特定健診・特定保健指導への影響も大きいと思われます。
改定点の詳細解説で参加者の理解が深まる
後半はガイドラインについての講義となり、まず見方について説明しました。項目には「BQ」と「FQ」が付いており、「BQ」とはbackground question(疾患の原因等)、「FQ」とはforeground question(臨床現場において意思決定に関する疑問)を指します。
次に22年度版の主な改訂点について、以下の5つに重点をおいて説明しました。
- 随時のトリグリセライドの基準値の設定
- リスク評価手法に久山町研究のスコアを採用
- 糖尿病患者のLDL-Cの管理目標について、合併症または喫煙ありの場合は100㎎/dL未満に
- 二次予防対象にアテローム血栓症脳梗塞を追加
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の項目、生活習慣の改善に飲酒の項を追加
①では空腹時、随時にかかわらずトリグリセライド(中性脂肪)は、将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症や死亡を予測するとしました。中性脂肪は食事による変動が大きく、値が高いと将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症や死亡のリスクを高めることが国内の疫学調査でも示されています。
②では、動脈硬化性疾患リスクに応じたカテゴリー分類として、「久山町研究のスコア」にもとづく絶対リスクを用いたフローチャートが示されました。久山町研究では、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患がエンドポイントとされています。
⑤については、危険因子の評価で「多量飲酒」は発症や脂肪を増加させるとし、ビンジ飲酒(むちゃ飲み)として2時間以内のアルコール摂取量が男性70g、女性56gでリスク増としています。また、NAFLD/NASHの追加について、肝臓系の疾患と脂質異常症は関連があり、心血管疾患の発症・死亡リスクも高リスクとなっています。
参加者からは「ガイドラインの改訂は1人で読み込むにはなかなか難しいところがあったが、今回の講義では一つひとつの解説がわかりやすかった」等の好意的な感想が多く聞かれました。
九州支部では、今後も管理栄養士に向けての基礎医学講座を年2回のペースで実施していく予定です。基礎医学を学びたいという方、関心のある方、ぜひご参加ください!