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給食部門の危機を乗り越えるための緊急セミナー | 2023年4月
病院給食存続の危機をどう乗り切るか
管理栄養士の活躍がカギを握る
3月27日(月)、一般社団法人日本医療経営実践協会が給食部門の危機を乗り越えるための緊急セミナーをオンラインで開催し、本協会の宮澤靖代表理事が講師として登壇した。テーマは「知っておくべき給食部門の経営管理」。当日は、同協会会員である医療経営士のほか栄養経営士、管理栄養士など約100名が参加した。
コスト高騰で見直す病院管理栄養士の役割
食材費をはじめ物流費、光熱費等あらゆる分野での値上げが続き、病院経営において給食のコスト高が問題となっている。そこで、病院経営の現場で活躍する医療経営士を中心とした病院関係者に向け、今回のセミナーが行われた。
宮澤代表理事はまず入院時食事療養費が20年以上据え置きになっている現状に触れ、今や病院給食は全面委託・一部委託・直営のすべての形態で収支差額がマイナスになっていると報告。「このままでは適切で質の良い栄養サポートの継続という根本が壊れてしまうのではないか」と危惧し、病院給食部門の改革が急務であるとした。
続いて、病院における管理栄養士の配置について言及。病床数が大規模になるほど50床あたりの管理栄養士数が減っているというデータを示したうえで、管理栄養士の病棟配置について医師・看護師等にとったアンケートを紹介した。
それによると、管理栄養士が病棟に配置されることに対しほとんどの医師・看護師が「医療の質が上がる」と考え好意的にとらえているものの、管理栄養士側は「指導件数や特別食数を増やし、加算を取ることを目的にしている場合が多い。これではチーム医療はうまくいかない」と指摘。加算から質へ、管理栄養士の意識の切り替えが必要だと強く訴えた。
病棟常駐は患者と病院経営の両面でメリット
次に宮澤代表理事は令和4年度の診療報酬改定に言及。まず医師からのタスクシフト・タスクシェアについて「単なる権限の譲渡、丸投げではタスクシフトにならない」と指摘し、職種間における双方向の情報の共有化が不可欠だと強調した。
また、今改定で特定機能病院には「入院栄養管理体制加算」が新設され、入院時・退院時それぞれ270点の540点が算定できるようになったことにも触れた。これにより、宮澤代表理事が勤務する東京医科大学病院では現在月に3000件程度の算定ができており、大幅な収入増につながっていると報告。しかし、特定機能病院への調査では、昨年7月時点で「入院栄養管理体制加算」を算定している病院が全体の2割程度、今後も「予定がない」と回答した病院が24.4%に上っているという。
この結果に宮澤代表理事は「これでは全病棟への拡大は難しい。収入面で大きなプラスになることはもちろん、患者にとって必要な栄養管理を行うためにも、管理栄養士は病棟に常駐しなければならない」と主張した。
病院管理栄養士=患者とのコンタクトが必要な職種と理解すべし
宮澤代表理事は厚生労働省の資料から「管理栄養士の業務イメージ」を示し、「望ましい姿」として病棟配置型の管理栄養士が提示されていることに注目。管理栄養士に係る診療報酬は患者とコンタクトしなければ算定できない構造になっていると述べ「管理栄養士が1日中厨房と事務所にいては1円も課金されないということを、ぜひ理解してほしい。管理栄養士を病棟に出し患者とコンタクトさせるという院内文化を作っていかなければ、現状を打破することはできない」と語気を強めた。
最後に、管理栄養士の病棟配置は診療報酬で方向性が示されてから動くのではなく、今から準備を進めることが重要であると強調。そのためには給食の生産管理システムを改善、合理化することが不可欠であり、それこそが病院給食危機の打開策になるとして講演を締めくくった。
参加者からは「病院給食という観点においても管理栄養士が病棟に出向く必要性を感じた」「次期改定に向けて今から準備をしなければならないと理解できた。病院の管理栄養士には病棟で患者様のために多職種と連携しながら栄養管理に特化していただきたいと思った」などの感想があったという。
日本医療経営実践協会では、今後も日本栄養経営実践協会や日本介護福祉経営人材教育協会等と連携しながら、医療・介護・栄養の分野を超えた取り組みを行っていくとのこと。栄養経営士もぜひ参加し、病院経営・部門経営に役立つ知識を学んで欲しい。