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【九州支部】セミナーレポート | 2023年3月
高齢者が抱える骨代謝疾患を
内分泌の機序から学ぶ!
日本栄養経営実践協会九州支部は2月18日(土)、「内分泌と骨代謝」をテーマとした「管理栄養士のための基礎医学講座」を開催しました。この講座は管理栄養士が業務を行う上で必要な、基礎的医学の知識習得が目的とし、年に2回行っています。講師は九州女子大学家政学部栄養学科教授で医師の三浦公志郎氏が務め、会場受講とライブ配信のハイブリッドで行いました。
内分泌が関係する幅広い疾患の基礎を学ぶ
このテーマを選んだ理由について、講師の三浦氏は「骨疾患や骨粗しょう症は高齢者、とくに女性に多く、栄養指導の際も把握しておくことが必要になる。骨代謝を理解するには内分泌を理解する必要があるが、内分泌をテーマにした勉強会は少ないため」と参加者に伝えました。
前半は内分泌疾患についての講義でした。細胞から物質(ホルモン)を放出し、血液を介して細胞が受け取ることを「内分泌」といいます。ホルモンの種類はさまざまですが、大きく分けて4種あり、ペプチド、ステロイドホルモン、アミノ・アミノ酸誘導体ホルモン、ビタミンに分けられます。脳下垂体や甲状腺に関連した、ホルモンの異常で起こりやすい疾患だけでなく、血圧を調整するレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系や心疾患関連にペプチドホルモンがあることなど、内分泌から起こるさまざまな疾患について解説しました。
骨粗しょう症を中心に疾患の原因や治療法を紹介
後半では、骨代謝について講義を行いました。三浦氏は毎回、テーマに関する最新の論文を紹介しており、今回は骨や骨格筋に関して「食事やサプリメントでカルシウムの摂取量を増やしても骨折予防に結びつかず、骨密度の改善も期待できない」「タンパク質摂取量とは独立して、朝食のアミノ酸スコアが高いほど高齢者の筋力低下抑制に関連する」等の論文を取り上げました。
カルシウムやリンの代謝について、骨形成と骨吸収の復習を行い、副甲状腺機能異常の場合は骨代謝に関するホルモンがどのようにカルシウムやリンに影響を与えるのか説明しました。副甲状腺機能が亢進される場合は骨吸収があがり骨粗しょう症が進み、低下すると筋肉が収縮します(テタニー)。
骨粗しょう症については、骨軟化症と比較して骨の質の問題ではなく、量に問題があると伝えました。リスクとして、閉経、加齢、ステロイドの投与などがあります。また、それ以外の要因によるものを続発性骨粗鬆症といい、栄養性の原因として胃切除後、食欲不振、吸収不良症候群、ビタミンC欠乏、ビタミンAの過剰などがあげられると説明しました。
骨軟化症の原因では、ビタミンDの欠乏があります。ビタミンDは食事でとる必要があり、日光での活性が必要で、最近は日光浴不足で乳幼児に骨軟化症が増えているそうです。
骨粗しょう症の治療ではビスフォスフォネート系が第一選択薬となります。骨吸収を阻害する効果があるもので、食品中のカルシウムと結びつくと効果がなくなります。そのため朝食前に飲む必要があるものの、飲み忘れが多い薬となっており、栄養指導の際も確認が必要だと強調しました。
セミナー参加者のコメント(一部)
「整形外科を担当しているので、骨折の治療、薬剤など教えていただき勉強になった」
「講義がわかりやすく、楽しみにしている。他の講義ではどんな症状が出るかの項目を読み上げるだけのことが多いが、三浦先生は理由を説明してくださるので、関連性が分かり覚えやすい」