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第7回「全国栄養経営士のつどい」東京大会開催レポート | 2022年10月
食事から治療へと変容する栄養経営士は
新時代を導く先導者へ
第7回「全国栄養経営士のつどい」東京大会のテーマは「栄養経営士の時代がやってきた!知恵と志で挑む新時代の栄養」。今回は宮澤靖代表理事をはじめ6名の理事が参加し、会場では登壇者の発表を真剣に聞く参加者の姿が見受けられた。
臨床栄養と給食管理の両軸を学べた講演
東京大会は宮澤靖代表理事と秋山和宏副代表理事による開会のあいさつではじまり、最初の演目として医療法人社団悦伝会目白第二病院副院長の水野英彰氏が基調講演を行った。
講演の最初に水野氏はウィズコロナでの高齢者に対する栄養療法の重要性を説き、フレイルの進行や高齢者のイベント発生率の上昇ついて懸念を示した。次にフレイルに対するアウトカム向上をめざした栄養療法のポイントのひとつとして「腸活」を挙げ、ヒトの腸内細菌叢(フローラ)について基礎的な情報から食事との関連までわかりやすくていねいに解説した。
その後、腸内環境に着目した次世代の経腸栄養管理としてプロバイオティクスやプレバイオティクスについて説明し、最後に東大の新蔵礼子教授によるIgAを用いた腸内細菌叢の改善に関する研究を紹介して、講演を終了した。
続いて、公益財団法人慈愛会理事長の今村英仁氏が事前に収録した動画で特別講演を行った。今村氏は病院給食管理について何が問題か、臨床栄養管理はこれからどうなるのか、そして管理栄養士がこれから解決しなければならない課題について「病院経営者の視点から」解説した。
豊富な資料を用いて現状を説明した今村氏は、まとめとして「病院給食管理については、ヒト(厨房の担い手)・モノ(調理システムの導入)・カネ(入院時食事療養に関する制度の問題)についてどう解決していくかという課題がある。臨床栄養管理については、ヒト(医学知識の習得)・カネ(診療報酬に係る収入をどう増やすか)の課題があるが、とくに医学知識については皆さんにもバックボーンとして持っていただき、臨床栄養管理をやっていただく。そのうえで、NSTなどチーム医療で活躍していただきたい」と語り、管理栄養士の活躍に期待を寄せた。
業務改善から新人教育まで幅広い実践報告
午後からは、大会の目玉である「栄養経営士による実践報告」が行われた。前半3名、後半4名の計7名の発表が行われ、そのうち6名がオンラインで参加。前半は協会の山下茂子理事と吉田貞夫理事が、後半は山下理事と真壁昇理事が座長を務めた。
最初の発表者は3年前の大阪大会でも発表したてんかん専門病院ベーテル栄養科科長候補の勝山祥子氏。勝山氏は、コロナ禍のなかでより患者に寄り添った医療を実践すべく、さらなる栄養部門の改革を行った事例を報告した。改善すべき事柄を病棟、外来、その他教育などの3 つに分け、それぞれどのようなことを実践したのかを説明した内容には、今後の部門改善を考える人にとって大いに参考になったのではないだろうか。
次に発表したのは、医療法人山部会上代成城病院栄養部の竹下尚美氏で、経営陣から出た「食事の質を上げたい」という要望に、どのように応えたかを報告した。
提示された抽象的な要望に対し、竹下氏はまず業務内容を見直し不必要な業務をばっさりと切り、部署内の動線の見直しも行い、就業時間内に課題解決に向け考える時間を確保した。そうして得た時間で思考を整理、結論を導き出したという。現状で考えるのではなく、考える時間を捻出するところから手を付けた竹下氏の行動力に拍手を送りたい。
前半最後の発表者は医療法人徳洲会湘南鎌倉総合病院栄養管理センター主任の伊藤典子氏で、部署内での新人教育方法の改善について報告した。
個人のラダー表を作成して一目で学習の進捗がわかるように工夫、役職者が確認する時間を定期的につくり早めのサポートができる体制をつくったことは、スタッフの質の確保とともに、新人が持つ不安への対策にもなるだろう。指導方法のマニュアル作成等まだ課題もあるというが、教育方法で悩んでいる人は、ぜひ参考にしてほしい。
仲間の報告を業務改善のヒントにしよう
実践報告後半の一人目は医療法人渓仁会手稲渓仁会病院栄養部統括主任の笠井由季菜氏で、脳外科NSTの活動として、各専門職が集まって経腸栄養プロトコルを作成した活動を報告した。
導入した結果として早期経腸栄養が可能になり、治療の一助となるだけでなく、入院単価、業務の効率化やタスクシフトにも貢献できたという。業務改善の手法のひとつとして、良いヒントになったのではないだろうか。
公益財団法人北海道医療団帯広第一病院栄養科科長の木村千恵里氏は、病棟常駐が一般病院にも拡大することを期待し、今から準備している様子を発表した。
栄養介入の見直し、カンファレンスの参加、疾患別の手順書作成等、事前に行う一つひとつの業務改善の積み重ねが栄養管理の質を向上させ、この先の病棟常駐を可能にしていくのだと感じさせる発表であった。
6人目の発表者は医療法人渓仁会手稲渓仁会病院栄養部統括主任の菅野未希子氏で、新卒の管理栄養士の現状と自院で行っている新人教育プログラムについて報告した。
1年間の教育期間や交代制のプリセプター制度により、知識の習得が早くなり、仕事に対する新人の不安もかなり軽減できたという。今後は中堅など他の年代への教育システムも検討中とのことで、ぜひ完成した際はまた現場報告で発表していただきたい。
最後は唯一会場からの発表となった洛和会音羽病院栄養管理室課長(統括)の長谷川由起氏が登壇、病棟での栄養管理に向け行っている取り組みを報告した。
計画的にスタッフの増員と業務整理を行うことで早期の栄養介入を実現、管理栄養士の病棟配置によりタイムリーな栄養管理が可能となり、栄養指導件数や栄養情報提供書の作成件数も増加したという。病棟常駐に向け着々と準備を進める様子は、これから準備を進める人の参考になるだろう。
紙面では紹介しきれないが、一つひとつの発表にさまざまな工夫や苦労、試行錯誤とその先にある成果と未来が詰まっている。一人でも多くの栄養経営士が、仲間の貴重な経験を糧として活躍することを願っている。
豊富な経験に基づく回答で悩みを一刀両断
実践報告の後は、前回から続いて2回目となる栄養経営士サロン特別版を行った。毎月オンラインで開催している「栄養経営士オンラインサロン」を会場で行うもので、宮澤代表理事が司会進行を務め、つどいに参加しているすべての理事が参加者から寄せられた質問や悩みに回答した。
内容は、栄養指導のノルマやNSTの活動内容についてといった日々の業務内容から、新人育成の悩みや管理職にとって必要な能力とそれを身につける方法といった教育・自己研鑽に至るまで、さまざまな質問・悩みが寄せられた。理事の先生方が自分の体験談を交えながら語る回答は、質問者はもちろん、聞いている参加者もいろいろな気づきが得られたのではないだろうか。
最後は古畑公監事より閉会のあいさつ(動画)があり、「第7回全国栄養経営士のつどい」東京大会のすべてのプログラムが終了した。
参加者の声~アンケートより抜粋
貴重なお話を聞く機会をいただき、感謝申し上げます。これからの自施設での活動に活かすべく、今回学んだ内容を参考に熟考し実行へ移していきます。
栄養経営士の皆さまが自施設でさまざまな取り組みをされていて、皆さん現状把握が的確だと感じました。栄養経営士の方のお話をはじめて聞きましたが、とても勉強になりました。
年々、発表される方のレベルが高く驚きます。刺激をいただき、明日からがんばろうという気持ちになります。また、ZOOMで開催いただきありがとうございます。来年も参加したいと思います。
皆様の問題解決に取り組む姿勢に力をいただきました。ところどころ泣きそうになり、自分も頑張ろうと思いました。今村先生の特別講演は豊富なデータと共に説得力があり、当院の問題とリンクしているため、経営陣に聞いていただきたいと感じました。
全体を通してどの先生のお話も、理事の先生方のご意見、ご感想も興味深く、参加できてよかったです。自分の仕事に対する考え方、方向性の再確認ができました。
私が栄養経営士を取得して数年が経ち、実践につなげている先生方を見る度に自分の不甲斐なさを思いながらも熱い気持ちがよみがえってきます。このような大会を継続していただき感謝の気持ちでいっぱいです。
病院給食業界の変遷を詳しくお話を聞くことができてよかった。今まで病院の体質的にお金をかける前に人手でなんとかするという流れが強かったが、そうも言えなくなってきた。上層部へのアプローチ方法を、人の流れ、仕事量まで考えて改革をしなければいけないと痛感しました。
本日は貴重な時間を過ごさせて頂きありがとうございました。今回はwebでの参加とさせていただきましたが、やはり会場で貴重な先生方と直接お話したり、発表された先生方に直接お会いしたりしたかった。以前参加し懇親会でつながった先生方とは今でも交流があり貴重なご縁と感じています。